SCSノ部屋

◆ 第2回「シューティング・スター」
S:「どうも、管理人のSです」
S:「"SCSノ部屋"の2回目になります。今回もナビゲート役を用意いたしました」
S:「では自己紹介をどうぞ」
ベ:「はじめまして、二階紅緒と申します」
ベ:「わたくしの美貌で皆様を虜にして差し上げますわ。おーほっほっほっ」
S:「……すまん、声だけなんだよこれ」
ベ:「……」
べ:「本日取り上げますのは"二階堂紅丸"様です」
べ:「美しさと強さを兼ね備え、シリーズを通して出場されていることからも人気の高さがうかがえますわ」
S:「私も日本チームの中では最も使用率が高い」
べ:「当然です。高校もろくに卒業できない万年学生やむさ苦しい子持ちには興味無いですわ」
S:「ただ、設定ではその万年学生に全く勝てていないぞ」
ベ:「……なにか仰いまして?」
S:「な、なんでもない。少々偏った意見ではあるが、あながち間違ってはいないな」
べ:「それに彼の素晴らしいところは女性に対する配慮がなされていることよ」
S:「しかしKOした後に謝るのもどうかと……」
べ:「……なにか?」
S:「いや、あー、気にならないならいいんだ。続けて下さい」
べ:「では遠慮なく。少し長くなりますが彼の魅力をたっぷりと――」
S:(なんというプレッシャー。しかし負けるわけにはいかない。ここは昔書物で得た静水の心で望まねばならぬようだ)
べ:「――そうね、あと彼はとてもスリムで、スタイル抜群なのよ」
S:「あまりの細さに"マッチ棒"とか呼んでいたな」
紅緒のマヒ睨みを巧みに受け流すS。
べ:「特に印象的なのがあの髪型よね。そそり立つ姿は雄々しさの象徴だわ」
S:「そうそう"ほうき"なんてのもあったな。実は片手駒で掃除をしていたのではないかと物議を醸したものだ」
紅緒の石化睨みを華麗に受け流すS。
ベ:「先程から受け流すだの石化だの、一体なにを解説されているのかしら?」
S:「あぁ! 主文は読まないで」
ベ:「とにかくおかしな横槍はやめていただけます?」
S:「くっ。しかし物事というものは表裏一体。良い部分があれば必ず悪い部分もある」
S:「一面だけを取り上げて評価するのはいささか問題だと思うのだが?」
べ:「……それも一理ありますわね。ただ、反対意見があまりに幼稚なのは如何なものかと」
S:「わ、分かりやすさを追求した結果だ」
ベ:「たしかによく分かりましたわ。あなたのレベルの低さがですけど」
Sは心技体とも小学生レベルだった。
S:「そんなオチはいらねぇ!」
―――――◆
べ:「続きまして、紅丸様のシリーズにおける技の変遷を追っていきます」
べ:「全編を通して大幅な変更点が少ないのが特徴。プレイヤーにとってはありがたいことですわ」
S:「実際は同じ技でも性能が毎年微妙に異なる。だから傍目には分からなくとも闘い方を変える必要があるのだ」
ベ:「居合い蹴りのように安定している技もありますわ」
S:「たしかに居合い蹴り自体に大きな違いはない。ただ、追加技の反動三段蹴りは大幅な変更がある」
S:「反動三段蹴りが使えるかどうかで居合い蹴りの価値が大きく変わるといっても過言ではないだろう」
ベ:「言われてみれば3段目まで当たらない時もあったわ」
S:「そう、使えない年もある。特に'99では密着でも繋がらないことがあるので忘れた方がいい」
ベ:「完璧だった紅丸様がどうしてこんなことに……」
S:「'99が特別と考えた方がいいかもしれない。公式の絵もお疲れだったし。性能を知ってあの顔になったのか、それともあの顔を見て性能が決まったのか」
べ:「体力が点滅しますと雷光拳が遅くなって大変困りましたわ」
S:「それもあるが、MAX版なら幻影ハリケーンの方が悲惨だな」
S:「ヒットしても途中でガードされるのは痛すぎる。ただMAX版を使うことが無い(使い辛い)ので、勝敗にあまり影響しなかったのが救いだ」
べ:「せっかく通常版とMAX版で決めポーズを変えてあるのに勿体無いですわ」
S:「実用性はないがロマンはある。飛び道具を抜けられる性能なら良かったんだが」
べ:「だいたいオロチ編からパワーダウンさせたのが納得いきませんわ」
S:「たしかにネスツ編で必殺投げが削除されたのはつらい。しかも追加技は幻影ハリケーンぐらいときているので立ち回りの弱体化は仕方ない」
べ:「せっかくなので必殺投げについても触れさせていただきます。相手のガードを崩す手段として非常に重宝しますわ」
S:「特に紅丸コレダーは1フレーム投げで、起き攻めが出来る高性能ぶりだ」
ベ:「投げ技に関してはシリーズが変わっても同じ感覚で使えますわね」
S:「今まではダメージぐらいの差しかなかった。しかし、2002UMにおいては紅丸コレダー、エレクトリッガー共に大きく変化している」
S:「紅丸コレダーは派生技の紅丸シュートが付いた。元は'96のCPU専用だった技で、実装を密かに願っていただけに今度の実装はとても嬉しい」
S:「エレクトリッガーはそれまでの遅い無敵投げから発生が格段に速くなった。これにより守りだけでなく攻めにも使えるようになったのは大きい」
ベ:「攻撃をかわして掴む美しさはありましたけど、避けられる事が多かったですものね」
S:「雷のエフェクトは画面に映えるし、特にエレクトリッガーは演出のメリハリが効いているからつい使いたくなってしまう」
ベ:「ほんと、一度体感してみたいものですわ。あぁ、想像しただけでシビれますわ」
S:「それ違う意味でシビれてるぞ」
―――――――◆
ベ:「それでは改めて二階堂紅丸様を総括させていただきます」
ベ:「めくりや空中投げ、ジャンプ軌道の高さもあって空中戦に優れています。また飛び道具を回避し易いことも大きな特徴といえますわね」
S:「地上でのけん制能力も捨てたものじゃない。特に遠立ちBと屈Dはうまく使うことで優位に闘うことができる」
ベ:「紅丸様の長い足は伊達ではありませんわ」
ベ:「一分の隙も無い無敵の男、それが紅丸様なのです」
S:「しかし、ジャンプ軌道が高く緩やかであることは反応されやすいとも言えるな」
ベ:「フライングドリルや空中雷靭拳でどうとでもなりますわ」
S:「立ち回りはたしかに強いがダメージという点での貧弱さは否めないなぁ」
ベ:「蝶のように舞い、蜂のように刺すスタイルだからいいのですっ」
S:「一番の欠点は地味な事だ。No.2のイメージや攻守共に決定的な強みを持たない中途半端さがキャラクターの存在価値を薄くしてしまっているのだよ」
ベ:「ち、中途半端ですって!? その言葉聞き捨てなりませんわね」
S:「ほう、ではどうするというのかね?」
ベ:「……こうするのよ!」
S:「何!?」
ベ:「エレクトリッガーーー!!」
S:「うぐおぉぉーーー」
ベ:「たわいもない……はっ、変わり身!?」
S:「くっくっく、いい仲間を持ったな」
べ:「……頭でも打ったのかしら」
S:「余計なお世話だ。しかしKOF史上最も紅丸が輝いたシーンを知らんとは、君の知識も知れているな」
べ:「私は対戦専門だからストーリーに興味がないの」
S:「その割に紅丸の台詞だけはよく理解しているようだが……まぁいい。ならばその実力見せてもらおう。ただしこちらも相応の力でやらせていただくがね」
べ:「あら、あなたも雷を扱えるのね」
S:「私はあらゆる格闘技を体得している。雷など静電気の延長に過ぎん」
べ:「いいでしょう。わたくしに挑んだことを後悔させてあげますわ」
S:「おっと、ここでは私の大事なオフィスが大変なことになる。表へ出ようか」
べ:「……ここ、オフィスでしたのね」
―――――――――――◆
S:「じゃあ、始めるか」
べ:「ええ、よろしくてよ」
S:「まずは飛び込んでゲージ回収させてもらうとするか」
べ:「甘いですわ!」
S:「ぬぅ、弱スーパー稲妻キックか。早めのタイミングといい、少しはやるようだな」
べ:「ふふっ、この程度で驚かれては困りますわ。間合い調整は基本ですもの、当然でしょう?」
S:「なるほど、ではこれはどうかな? チェンジステージ2001!!」
べ:「!? 急に、背景が!」
S:「変わったのは背景だけではないぞ、そらっ」
ベ:「稲妻キックが出せない、どうして!?」
S:「真の紅丸使いならシリーズ毎の立ち回りを熟知しておくべきだ。三段蹴りから雷靭拳!」
ベ:「やりましたわね。ではわたくしも……あら、追い討ちが間に合わない?」
S:「君は2001を全く知らないようだな。三段蹴りは弱でなければ追い討ちは出来ないのだよ」
ベ:「そ、そうでしたの。(メモメモ)」
S:「これではさすがに歯応えがなさすぎる。では最新の02UMで勝負というのはどうかな?」
ベ:「ええ、異論はないわ」
S:「いくぞ、フィールドチェンジ!」
ベ:「これなら存分に闘えますわ。中距離から圧力をかけて相手を誘う」
S:「なんだこのプレッシャーは! 地上のけん制と空中投げで手が出せないとは、ぐぬぅ〜」
ベ:「固まった好機を逃しはしない。すかしジャンプからのMAXエレクトリッガー!!」
S:「ぐはぁっ……へ、変更点をしっかりと認識しているようだな」
ベ:「優雅さは多少犠牲になりましたけれど、勝つためには手段を選びませんわ」
S:「その勝ちへの執念を利用させてもらおう。さぁ、撃ってこい!」
ベ:「強がりはためになりませんわよ? そこっ、幻影ハリケーーン!!」
S:「ぐふっ……ふふっ、ふっふっふ」
ベ:「何が可笑しいの? 気でも触れたのかしら」
S:「機は熟した。では反撃開始といこうか」
ベ:「残り少ない体力で逆転を狙うことは至難の業ですわよ。特にわたくしが相手なら尚のこと――」
S:「調子に乗るなよ。問答無用のダッシュ紅丸コレダー!」
ベ:「ひ、人が話している時は黙って聞くものですわ。この卑怯者っ」
S:「何とでも言え。雷塵纏!」
べ:「MAX2? そういえばわたくし、用途が分からなくてこの技だけは無視していたわ」
S:「そんなことだろうと思っていた。では、とくと味わうがいい。雷塵纏の力を」
べ:「そんな見え見えの攻撃が当たるとでも――えぇっ、ガードできない!?」
S:「HAHAHA! そしてとどめの幻影ハリケェェーーン!!」
べ:「きゃああぁぁぁーー」
S:「決まったな――ん?」
べ:「ま、まだよ」
S:「ほう、意外にしぶといな。だが、すぐ楽にしてやる」
べ:「発動! 雷塵纏!」
S:「なんだと?」
べ:「最後の最後で詰めが甘かったわね。今度はあなたが受ける番よ」
S:「小癪な。その程度の玉一つ、回避できないとでも思ったか」
べ:「ふふっ、そうね。じゃあ遠慮なく。発動! 雷塵纏!」
S:「に、二個付け!!」
べ:「回避できるものならどうぞご自由に。では行きますわよ」
S:「うおぉ!?」
べ:「はあぁぁ、雷光拳!!」
S:「あじゃぱァーー!!」
―――――――――――――――◆
べ:「終わったのね」
べ:「ところでわたくしは一体何をしていたのかしら」
べ:「紅丸様の生写真がいただけると聞いていましたのに。仕方ありませんわ」
べ:「それでは本日はこのへんで失礼致します。See you next time!」

 柔らかな風が彼女を優しく包む。草花の擦れ合う音だけがあふれる空間。紅緒はゆっくりと歩き出す。未熟な自分を高めるために何が必要なのだろうと自問する。凛々しくも艶がある四肢を夕日が鮮やな紅色に染め上げていた。
――終

S:「次回? どうだろうネェ……」


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